弱者の理論

場所と空間、重力とポップカルチャー。


只今、アーカイブ更新中…

近況 ―Base Ball Bearの新曲とドラマチック理論―

どうして3000字クラスのテキストを二日連続で書いているんだっていう。

いや、この記事もまだ書き出している時点で3000字を超えるっていう保証は無いんですが、どうせ超えるんだろうと思って書いています。いろんな要素をごった返しにしながら書くから、雑談みたいになってますしね。ひとつのまとまった文章と言う形にしなければいけないというレポートに似たプレッシャーも無いので、書きたいことだけ書いて飽きたときにやめます。

 

とりあえず近況としてはひと山超えた状況ですかね。いや、こうやってひと山越えたって思っちゃうから今までの緊張感が抜けちゃって、これから夏休みに向かって一直線で堕落していく運命なんですけどね。どこかで気合を入れなおさないといけないです。

ちなみに、まだ夏休みではないですね。夏休みを迎え入れる準備はいつでもできているんですが、なんというか、まあ、その。

 

では、前回の雑記でちらりとふれた「Base Ball Bear(以下、BBB)の新曲がすばらしい」という話をしますね。

初恋(初回限定盤)

初恋(初回限定盤)

ここできちんとアマゾンの画像を張り付けておくと、FBで投稿したときに見た目がよくなるんですよ。 

 BBB、僕は大好きなバンドでして。恐らくある程度であればどんな新曲が来ても僕は誉めてしまうと思います。もう洗脳されているんで。普段は好きなバンドをこうしてまとまった文章で推す、っていうのはなかなかしないんですけど、これは本当に格別だったので書いてみようと思います。僕のTwitterアカウント(@Boshi_OS)も最近は好きなバンドの販促botと化している節があるのでまあいいとしましょう。しばらくの間お付き合いください。

音楽の勉強とか専門でしている訳じゃないけど、好きなことを好きなように語る分には自由でしょう。若干の批判は入ってしまうのが申し訳ないですが。 「音楽の知識が無い人間のやる音楽批評」が僕のテーマです。いや、今回は批評って言うより褒めちぎって終わりなんだけど。

 

収録されているコラボレーション楽曲は一旦置いていて、僕が喋りたいのは表題曲の「初恋」です。 リンクを貼りましたが、そのままクリックしちゃうとこのタブのまま飛んで行ってしまうので、一旦右クリックで別のタブでリンク先を開いてからこっちに戻ってきていただけると嬉しいです。ワンクリックで別のタブで開く方法はわからないです。誰か教えてください。

 

そもそも、僕が楽曲単位でどうしてこれを誉めるかというと、この楽曲、6分近くあるんですが、聴いていて間延びするような無駄が全くなく、それでいてドラマチックに展開していく、ということでして。

 

話はちょっと転がりますが、僕は友人がなかなかいいバンドをやっていてそれを見に行きたいという理由でよくライブハウスに足を運ぶんです。それをやることによって何が一番良かったかって、良くない楽曲をたくさん聴ける、ってことなんですよね。やっぱりきちんと全国流通する形で販売されている音楽っていうのは、程度はあれど、どれもいいものなんですよ。プロで音楽作る人が携わっているんだから、素人が聴いている限りはケチが付けられないレベルで完成されている。

でも、ライブハウスでやっている無名のバンドっていうのはプロがついているわけでは無いですから、多少出来の悪い楽曲に出会うこともよくある。最近はそんなものを聴くたびに、もっとキーボードの音を歪ませたら面白そうなんだけどなあ、とか、疾走感だけで退屈だなあとか。いや、試したで却下されている意見かもしれませんが。まあとにかく、いいんだけどちょっと物足りなさを感じる曲に、これどうやったら面白くなるんだろうなあとか考えるのが好き、ということにしておきます。

そんなこんなでいっつも思うのが、いかに楽曲をドラマチックにするか、ってことなんですよね。前述したみたいに、疾走感だけの楽曲で四分弱っていうのはどうなんだろうとか。エイトビートパワーコードをばっかりっていうプロバンドもたくさんあるけど、あれだってそこに至るまでに相当なプロセスを踏んでいる訳ですよ。歌のメロディがいいのは当然だし、演奏だって段違いに上手じゃないといけない。そもそも僕がパンク系の楽曲が好きではないというのもあるし、そういうバンドを目にするたびにちょーっと眠くなったりして。轟音なのに。

 

何が言いたいかと言うと、全ての楽曲はそれにどんな意図が込められていようとも、結果的にドラマチックでなければいけない、と。一曲にだって起承転結があるべきで、ごり押しでそんなの関係ねえ、っていうのは僕はあまり好きではないです、ということです。

あ、ただ聴き手の立場で贅沢なこと言うな、とか言うな。そこ。

 

で、この「初恋」のどこがドラマチックなのかというと、楽曲自体の“過不足の無い展開”にあります。 過不足の無い。ここポイント。

 

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『ファンクラブ』というアルバムから「センスレス」という楽曲を例に出そうと思うんです。簡単に説明すると、展開をするだけして戻ってこない楽曲、といった感じでしょうか。

ファンクラブ

ファンクラブ

 

つまり、一般的な楽曲は「A→B→サビ→A→B→サビ→…」といった同じメロディを繰り返しながら展開していくのですが、「センスレス」は「A→B→C→D→…」と異なったメロディをどんどん繋いで、最後のメロディで爆発するまでの橋渡しを行う、というもの。

こういった「行くだけ行って戻ってこない」展開、確かに最後に到達したときのカタルシスはなかなかのものがあるしドラマチックであるとも思うのですが、どうも僕は全面肯定することができないんですよね。その理由が、展開に必然性が無いから、というもので。例えば「A→B→C→D」と展開していく曲を「A→B→D」 として、Cを抜いちゃったらどうするの、とか。もしくは「A→B→E→D」と、Cが別のメロディになっちゃったらどうするの、とか。メロディ自体がそこまで強く結びついているわけでは無いから、このどっちでも成り立ってしまいそうな気がするんですよね。手段であるはずの展開が目的になっている、とでも言いましょうか。

 

対してこの「初恋」、展開は「A→B→サビ→A→B→サビ→C→サビ→サビ」と至って普通のものですが、リズムの変化って言うのがものすごく効果的に使われている。ドラムを中心に聴くと、16分でハイハットを刻みながら始まったドラムが歌が始まると同時にスカスカになって、二度目のAメロでは再び16分の切迫感が戻ってくる。倒れ込むようなBメロを経て、再びサビでイントロのような爆発をする。

まあここまで聴いたらまだ普通の楽曲ですよね。この楽曲最大のキモは、Cメロを経た大サビにあります。今まではサビの裏のドラムは16分で叩かれていたのが、歌のメロディは同じなのにハーフテンポになるんですよ。それでワンフレーズ歌ったあと、再び今までと同じ演奏でサビをもう一度やって、アウトロに入る。そして、アウトロに入るのと同時に再びハーフテンポになるんです。そこで入ってくるギターソロ。最初に聴いた時はここで鳥肌でしたよ。

僕が最初に書いた“過不足ない展開”っていうのはこのことです。最小限の歌メロをループしながら演奏を二転三転させることで、どんどん展開していく6分弱という長さの楽曲でありながら、無駄な部分、切り取り可能な部分が全く存在しないんですよね。違った形でサビのメロディーが戻ってくるときのカタルシスはなかなかのものだと思いませんかみなさん!

楽曲に起承転結があるとすると、展開していくっていうのは文字通り“転”の部分。そして、転がしすぎた楽曲を最終的に疾走感だけでなくがっちりと着地させるのが、最後のハーフテンポとギターソロ。変拍子を使う事で、ただ他のメンバーが演奏するオケにギターソロが載っている、という形では無く、演奏とソロががっちりとシンクロして、ウルトラCを決めた後に着地するわけです。 

いかんいかん、好きなものと距離が置けなくなっている。

 

 

話は変わりますが、僕がサカナクション「ナイトフィッシングイズグッド」が大好きなのに、恐らく同じ方法論をブラッシュアップして制作したと思われる「目が明く藍色」がそこまでツボにはまらなかったのもこれが理由。 後者は展開するだけして戻ってこないけど、前者はリズムを変えて最初のサビが戻ってくる。つまり、「目が明く…」はどちらかと言うと「センスレス」と似ている。「ナイトフィッシング…」と「初恋」は戻ってくる、という構造は同じでも、逆の事をやっているんですね。

NIGHT FISHING

NIGHT FISHING

kikUUiki(初回限定盤)

kikUUiki(初回限定盤)

 

あと、「ナイトフィッシング…」は、途中で一旦違う世界に吹っ飛ばされるのが面白いですね。夜が深まって、いつのまにか一度異世界に飛んで行ってから、同じ世界に戻ってくるんだけど世界が全く変わって見える、と言ったところでしょうか。こちらもなかなか素晴らしい楽曲なので是非。

 

完全に、僕が思う「ドラマチック理論」の話になっていますね。つまり何が言いたいかと言うと、BBBの新曲「初恋」は、 シンプルな楽曲でありながら、そこから最大限のドラマを引き出しているのが素晴らしい、ということです。

もちろん、展開していくことがつまりドラマチックということにならない事はわかっているのですが、構造からもっとも言及しやすい方法が、この一周回る、という展開方法なんですよね。 

定期的に書き足したいですね、ドラマチック理論。 

 

いやいや、好きな物について語るっていうのはアレですね。ついついテンションが上がって何言ってるかわかんなくなってそうだもん。これ以上熱くなってもしょうがないので、この辺で切りましょうか。

前回の雑記のように一言で文章の趣旨をまとめると、「素晴らしいから、聴け!」ということでしょうかね。

 

ちなみに、途中でちょっと触れた友人のバンド。micannという名前で、横浜を中心に活動しています。彼らの「よるをあるく」も、なかなかドラマチックな展開をする素晴らしい楽曲です。一周して戻ってくるタイプですね。アマチュアバンドで5分ある曲を退屈せず聴かせられるバンドって正直なかなか無いと思います。 リンク先はライブ映像ですが、PVもあるのでそちらも是非。

正直、展開という点では彼らが少し前に演奏していた「ジャックダニエル」という曲が4分で最高の展開をしていく楽曲なのですが、これは演奏がネットに挙げられていませんね。早く人の目につく場所に置くべきですね。 

ドラマチック楽曲のついでで、友人に媚を売ってみました。 お金頂戴。

 

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

今日思わずジャケ・タイトル買いした漫画、『無重力コミュニケイション』。僕の漫画ジャケ買いは大概失敗するのですが、意外や意外、非常にすばらしいです。

無重力コミュニケイション(1) (少年マガジンコミックス)

無重力コミュニケイション(1) (少年マガジンコミックス)

1巻の最後の最後で怒涛の展開。これは最終的に「最終兵器彼女」みたいになっていくのかしら。 

 

 

そして、結果として約4200字だったという。あばばばば。