弱者の理論

場所と空間、重力とポップカルチャー。


只今、アーカイブ更新中…

アーカイブ

今だからこその岡村靖幸 ――バブル世代の「どぉなっちゃってんだよ」、さとり世代の「ビバナミダ」

ポップスに限らず、世間の至る所に〈あるがまま〉原理主義が広がって久しい。自分らしく生きていきたいという歌詞が愛され、書店の平積みには無理をせず生きていくためのハウツー本が並べられている。誰もが自分らしく無理をせず、頑張らずに生きていきたい…

アニメなんて観ている場合じゃない

夜がどんどん長くなってきている。 秋から季節がどんどん移ろっていく様を言いたかったのではなく、僕達の生活の事だ。この世には一人でできる事が満ち溢れている。ゲームや動画サイト、深夜に放送されているクオリティの高いアニメを観ながら友達とSNSで…

五里霧中、無我夢中

「わかった。じゃあアタシが探り入れてきてあげるから!」 彼女は僕の高さに合わせて顔を上に向けているが、それでも俯き加減に見えた。うっすらと黒く縁取られた目が二つ、そこから僕を真っ直ぐに捉えている。そのまま視線を僕から外すことなく、彼女は顔を…

ビックバンまで

全ての授業を終えて、バイトに向かうために僕はバスに乗る。授業が終わってからすぐのバスは何時だって混雑する。バス停留所から大きくはみ出して、近場の 信号近くまで人の列が伸びる事だって珍しくは無い。僕はその列の中腹につけ、程なくしてやってきたバ…

彼女の呼吸を聞きながら

(井口奈己監督『人のセックスを笑うな』作品批評) 人のセックスを笑うな [DVD]出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)発売日: 2008/07/25メディア: DVD購入: 14人 クリック: 779回この商品を含むブログ (445件) を見る 井口奈己監督作品『人のセックスを笑うな…

『ぐるりのこと。』の涙の種類

(橋口亮輔監督『ぐるりのこと。』作品批評) ぐるりのこと。 [DVD]出版社/メーカー: VAP,INC(VAP)(D)発売日: 2009/02/25メディア: DVD購入: 6人 クリック: 139回この商品を含むブログ (294件) を見る あれほど気にしていたのに家の蜘蛛を殺してしまった夫の…

世界のハリボテを破る

(幾原邦彦監督『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』作品批評) 少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録【劇場版】 [DVD]出版社/メーカー: キングレコード発売日: 2000/03/03メディア: DVD購入: 1人 クリック: 99回この商品を含むブログ (91件) を見る 幾…

『ヒトクイマジカル』が物語脳にしかけるカウンター

初めての試みとしてブログで論考のようなことをやってみたいと思うのですが、がっつりまじめな文章になってしまうと面白くないので喋り口調でゆるーくやりますね。 題材は西尾維新の戯言シリーズ5作目『ヒトクイマジカル』です。とりあえず今回はこの作品を…

グループ交際に発生する数合わせの男とメタコミュニケーションについて

いつかは一筆をしたためようと思っていたのだが、まだ自分の中でまとまっていない事について書こうと思う。それは自分の中でデリケートな問題であって、それをひとつの作品として形を整え、本当にいるかどうかもわからない読者の方々に見せるのはあまりにも…

決意は夜に

孤独は火を付けるとよく燃える。 それだけで存在している時は、見た目が酷いのも匂いがキツいのもなんとか我慢できる。『危険取扱注意』と赤いシールを張って、取り立てて丁寧に扱うようなものではない。重いものでもないから、持ち歩く事にもさほど苦労はし…

僕はその箒で空を飛ぶ

僕はかつて通っていた中高一貫校で、入学当初から学校の剣道部に入っていた。同じ学年にいる剣道部の男子は僕ともう一人だけで、ここでは彼を仮にK君とする。K君は中学入学当初から170センチを超える高身長で、非の打ちどころも無い端正な顔立ち。男女問わ…

渋谷の街を行く

彼女は、明治通りを駆けて行く。 向かってくる人混みの間を縫って、履きつぶしたローファーと地面をこすり合わせながら、ずり落ちる鞄を持ちなおして、渋谷の街を行く。 彼女が時間をかけて整えた髪の毛は、風に吹かれて崩れてしまうだろう。あんなに走れば…

家に帰ってビールを飲もう

いつまでたっても、夢の国が持つプレッシャーに勝てない。 例えば、友達、好きなあの子とグループで遊園地に行くとする。次に乗るアトラクションは2人乗りだから、男女ペアになるようにグーチョキパーでグループ分けをしようと誰かが提案した。その結果、あ…

オー・マイ・スイート・ダーリン

きみのためなら、死ねる。 個人的には、これくらいのテンションは嫌いじゃない。愛とは常に犠牲が伴うもので、それくらいの覚悟があってもいいのかもしれない。しかし、彼女から「単位落としそうだから、あなた死んで」と言われたら死ぬのだろうか。いや、俺…

嗤ってみせて。

彼女の笑顔の裏を見ようとしていた。 自分が笑えば、茶色い髪の毛がふわふわ揺れることを知っているかのようだった。僕が、彼女の八重歯をもう一度見たいと思っているのを知っているかのようだった。自分が笑えば、自分の半径数メートルの内側で何が起きるの…